兵庫県(そばめし県)

県名である兵庫は神戸の旧名です。奈良時代あたりから賑やかな港でしたが、平清盛がここに福原京を営み、幕末に開港場のひとつとされ発展しました。国際的でホスピタリティ豊かな美しい神戸の町は、すぐれたセンスの住民を生み出し、全国でももっとも好感度の高い大都市としての評価を得ました。

 

民度の高さは阪神・淡路大震災のときにも示され、被災地の人たちのごく自然な助け合いと秩序の維持は全国に兵庫県と示しました。しかし、航空機の時代になると、神戸は日本のアジアやヨーロッパへの窓口という性格を失ってしまいます。さらに、神戸沖合への空港移転を拒否して関西国際空港が大阪府南部にとられたことで致命的な打撃を被ったのです。

 

阪神・淡路大震災のあとは、いわゆる神戸株式会社への評価にも厳しいものがありますが、たとえ、その成果を連続ヒットとして肯定的に受け止めたとしても、空港問題での失敗は満塁で外野手が平凡なフライを後逸して走者一掃にしたくらいの大失策として惜しまれます。

 

しかし、いずれにせよ神戸港の美しさは世界屈指のもので、港内クルーズは神戸観光の必須コース。埋め立て地にはポートアイランドなど多くの魅力的なスポットが並びますが、ハーバーランドの「モザイク」は全国でも屈指のデートコースのひとつとして人気を博しています。

 

阪神間は大阪の上澄みを集めて神戸風の味付けをしたような地域です。もともと西宮や伊丹に酒造業が発展したように大変豊かな地域でしたが、阪急電鉄の小林一三氏の発案によって芦屋は大阪の富裕層の住宅地となり、宝塚は少女歌劇のメッカとなりました。

 

芦屋に住む富裕層の金持ちはビジネスは大阪でしますが、家族は神戸に料理を習いにいったり買い物を楽しむということも珍しくありません。それこそ一時期、芦屋に住んだ文豪谷崎潤一郎氏による『細雪』の世界です。

 

ここで生まれた文化はインテリっぽく、しかし、新しいものが好きで、社会意識が高くしばしば反権力的で左翼的ですらあります。もっとも高い所得層を読者に持ちながらどこよりも進歩的な朝日新聞もこの地域が育て、あした。

 

土井たか子氏や、神戸生協を生み出したのも、この地域の開けた生活者である女性たちですし、男性抜きの汗くさくない美しい愛の世界の夢を売る宝塚歌劇も同じ根っこがあると思います。

 

兵庫県は、播磨、但馬、淡路の三国全部と、摂津と丹波の一部を含んでおり、淡路島は明石海峡大橋の開通で一気に阪神に近くなりました。

 

真言宗本福寺水御堂は安藤忠雄氏の作品で、屋根に当たる部分に蓮池がありその下がお堂になっています。ルコルビュジェのロンシャンの教会の仏教版といった趣のある傑作です。

 

兵庫県でも播磨には、快活で豪快な気風が残っています。姫路城は羽柴秀吉によって近代城郭として整備され、江戸時代初期に池田輝政が現在の姿にしました。白鷺城といわれるように全体を白っぽい色で一貫した統一感があり、ほどよい高さの丘の上に築かれた平山城で、しかも、駅前のメインストリートの真正面に天守閣がそびえているのが良い感じです。

 

近年、城をいかした街づくりに積極的に取り組み、市内のあちこちに城を上手に借景にしたすばらしい風景が誕生しています。世界的なデザイナーである高田賢三氏も姫路出身ですが城を背景にしたファッションショーやフランスの名城シャンティイーとの提携など故郷に貢献しています。

 

兵庫県内の他の藩としては、尼崎、明石、龍野、赤穂、篠山、出石などがあり、丹波では近年、丹波黒豆がグルメブームにうまく乗ったことで、煮豆や煎り豆にしても美味しいですが、マンガ『美味しんぼ』にも登場したように枝豆にしても最高です。但馬は松葉蟹で知られ、神戸牛も実質的には但馬牛です。